毛のはえたようなもの

インターネット的なものをつらつらとかきつらねる。

「かわいい」に関するまとめ

全体まとめ

「かわいい」とは非常に主観的な言葉であるため、一般的に「かわいい」をきちんと定義した本はない。*1
とはいえ、言葉の使用傾向はあるので、それを現代のアンケート・フィールドワーク調査や、歴史的な分権から明らかにしようと試みた文献や研究が存在する。ただ、調査者のバックグラウンドや、「かわいい」に対するとらえ方によって主張の抽象度や志向が大きく異なり、また全体としてまとまりがない。例えば、「かわいい」は「若者の語彙力不足だ」という批判的な内容であれば、本質的なかわいさについて論じるのではなく、「かわいい」文化から演繹される若者像を語る、などのように。逆に、好意的にとらえている調査者の場合、調査結果は一見全てのものに当てはまるように見えるが、自分の興味のある「かわいいもの」に調査対象が偏り、したがって「かわいい」とは何かについて偏りがある。
下記には、特に参考になったと思った本や論文について挙げる。主観的な主題に対して、これまた極めて主観的なチョイスですが、許してほしい。
かわいい、は、単純で、難しい。そして正義!

「かわいい」に関する書籍

書名はデザインだけれども、”かわいい”形と色について調査した結果が掲載されている。書き方も丁寧で、図も適切に入っているため非常に読みやすい。


カワイイパラダイムデザイン研究

カワイイパラダイムデザイン研究

「かわいい」という言葉に関して多数のフィールドワークを行い、そこから演繹的にかわいいの概要を示そうという試みが多数掲載されている。また建築に関しての言及比率が大きい。比較的広範囲の対象に対して「かわいい」を研究していること、多数の写真や例が挙げられている点はよい。しかし残念ながら文章にまとまりがなく、とても読みにくい。


「かわいい」の帝国

「かわいい」の帝国

特にファッション史からみた「かわいい」について解説。かわいいに関する歴史を知るためには、この本が一番詳しい気がする。注釈も詳しく、読み物として面白かった。


「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

文献をあたってまとめられた。古典(枕草子)から近年の萌えまで。特に外国のKawaiiについてくわしい。キャラクター文化についても言及している。ただ、いまいち自分の持っているかわいい観と隔たりを感じた一冊。


キャラ化するニッポン (講談社現代新書)

キャラ化するニッポン (講談社現代新書)

「○○もってる私がカワイイ」などのキャラクターの自己投影に関する調査とその考察がメイン。バンダイのキャラ研の方なので、キャラクターとしては王道のものを扱っている。


キャラクター・コミュニケーション入門 (角川oneテーマ21)

キャラクター・コミュニケーション入門 (角川oneテーマ21)

売れるキャラクターの作り方、キャラクターを媒介とした商業、コミュニケーション例。キティちゃん誕生秘話が語られていた。


可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

古典的なかわいい女性像(亭主のことを慕い、亭主の意見を自分の意見とするような人)を描く文学作品。これはこれでかわいいと思う。


枕草子 (岩波文庫)

枕草子 (岩波文庫)

かわいいものを愛でまくったことで有名なのは 「151段 うつくしきもの」

かわいいに関する論文

  • 稲見昌彦, 小泉直也, 常盤拓司, 杉本麻樹: “Kawaii ユーザインタフェース”, エンタテイメントコンピューティング2010, 2010.:「かわいい」に関して研究しているというより、「かわいい」というメタファを取り込んだ(稲見研の)研究例をまとめた論文

「かわいい」が根底にある(、またはあったのではないか?私が勝手に思っていた)研究または実例

  • H. Kozima, M.P. Michalowski, and C. Nakagawa, “Keepon,” International Journal of Social Robotics, vol. 1, 2009, pp. 3--18.:黄色くて柔らかいロボット。かわいい・・・! 動画

番外

とはいえ、「かわいい」は超主観的なものだよね!やっぱ、びびびっときたら、かわいいんですよ!という思考停止のなれの果てがこちらのかわいいもの集めのTumblrです。
他の人のかわいいは知らないけど、私の思うかわいいはここに凝縮されている。
http://kaeru-san.tumblr.com/

*1:逆にさだまったら「かわいくない」だろうとも思うし。